死んで初めて、感謝が言えた。 終活スナック「めめんともり」の入棺体験してきた話

体験談

こんにちは、ヤマジです。
先日、「入棺体験」というちょっと変わった、でもめちゃくちゃ面白い経験をしてきたので、今回はそのレポートをお届けします。

死んで初めて、感謝が言えた。
終活スナック「めめんともり」の入棺体験してきた話

友人Aさん
友人Aさん

ねえ、棺桶に入ってみない?

そんなセリフ、普通の友人なら絶対に言わない。
でも、その日、僕はその誘いに乗った。

ヤマジ
ヤマジ

なにそれ!?めっちゃおもろそう!

訪れたのは江東区森下。
都営新宿線・大江戸線「森下駅」から徒歩1分のところにある、かわいいマフィン屋さんの2階にある終活スナック「めめんともり」だった。

このスナック、コンセプトがとにかく秀逸だ。

「カラオケないけど、カンオケあります」

歌わないスナック、じゃあ何があるの?

と思うかもしれない。

そこにあるのは死と向き合う体験。入棺体験だ。

 

正直、終活スナック「めめんともり」に入店する前までは、めちゃくちゃびびっていた。

冗談抜きで、

ヤマジ
ヤマジ

棺桶に入って、人格変わったらどうしよう。

と真剣に考えていたほどだ。

 

しかし入ってみれば拍子抜け。

僕たちを出迎えてくれたのは、

オーナーの村田ますみさんと、ちーままの布施美佳子さん

ママ
ママ

今日はよろしくお願いします。

チーママ
チーママ

よろしくお願いします。

ちーままの布施さんは、なんと棺桶を作るアーティスト

布施さんが作る棺桶は、とってもかわいくおしゃれな棺桶で、見た目のインパクトとは裏腹に「ここで眠ってみたい!」と思わせるほどだった。

お二人とも、驚くほど柔らかい雰囲気で、終活や“死”という重たいテーマのはずが、店内にはふんわりとした空気が流れていた。


Work1.「あなたは誰ですか?」と問い続けられて

最初のワークは、ひとことで言えば“自分を問い直す時間”だった。

やったことはシンプルで、

あなたは誰ですか?

という質問を、3分間、繰り返し繰り返し聞かれ続けるだけ。

質問に回答しても、永遠に

「あなたは誰ですか?」
「あなたは誰ですか?」
「あなたが誰ですか?」

と質問されるワーク

最初のうちは、

友人Aさん
友人Aさん

あなたは誰ですか?

ヤマジ
ヤマジ

名前はやまじです。

とか、

友人Aさん
友人Aさん

あなた誰ですか?

ヤマジ
ヤマジ

東京都在住の会社員です。

とか、よくある自己紹介を返していた。

でも、何度も何度も繰り返されるうちに、次第に言葉が詰まってくる。

友人Aさん
友人Aさん

あなた誰ですか?

ヤマジ
ヤマジ

えーーと、、、

ふと

ヤマジ
ヤマジ

(あれ? 俺って、それだけの人間だったっけ?)

と思い始め、気づけば、自分の好きなもの、苦手なこと、人に言えないようなコンプレックスや不安まで、口にしていた。

ヤマジ
ヤマジ

最近薄毛に悩んでいます。

ヤマジ
ヤマジ

妊活について勉強しています。

このワークは、心の壁をスルスルと溶かしていった。

世間体を剥ぎ、肩書きを取り払い、最後に残るのは、“自分の核”だった。

そして僕は最後に、こう思った。

「俺はこれをやった人間だ」と、一言で語れる何かがほしい。

それは、秋元康が「AKBを作った人」と言われるように。
仕事でも、表現でも、人間関係でも。

“やまじ”という人間を象徴するものを、もっと明確に言葉にしたくなった。

僕には、それがまだない。けれど、だからこそ、この問いは今の僕に必要だった。


Work2.自分の弔辞を書くことに苦戦

次のワークは、「弔辞を書く」というものだった。

自分が死んだあと、誰かに読んでもらう弔辞。
今回はそれを、自分で書くという、なんとも不思議なワークだ。

 

僕は“妻”の立場になりきって書いてみることにした。
だけど、これが驚くほど筆が進まない。

まず、言葉が出てこない。

何を書けばいいのか、どんなテンションで書けばいいのか、ぜんぜんわからなかった。

 

最初の5分間は、紙の前で固まっていた。

どうせなら「感動させたい」と思って、綺麗なフレーズや心に響く比喩を探そうとする。

でも、そういう取り繕った感情では、まったく文章が出てこなかった。

  • 「こんなこと書いたら泣くだろうな」
  • 「ここでグッとくる表現を入れたら読んでる人も感情移入しやすいかな」

そんなふうに“狙った”ことばかりを考えていたら、ペン先が止まったままだった。

 

やっぱり、感動は“作ろう”とすると、嘘になる。

気づけば、制限時間の15分が終わりかけていた。

ヤマジ
ヤマジ

すみません、あと10分ください!

とお願いして、新しい紙を1枚もらう。

深呼吸して、まず「自分が死んだこと」をリアルに想像する。

 

そして、そのとき妻はどう感じるのか。

どんな声で、どんな震えで、その手紙を読んでいるのか。
……涙をこらえながら、喉の奥で言葉を飲み込んでいるのかもしれない。
声が震えてしまって、途中で読めなくなるかもしれない。

 

そんなイメージを“想像”じゃなく“実感”として受け止めたとき、不思議と、言葉があふれるように出てきた。

「もっと一緒にいたかった」
「なんで先に死んじゃったの?」
「私はあなたと、これからの人生を生きたかったのに」

そんな、ありふれていて、でもどうしようもなく本物の言葉だけが、紙の上に並んだ。

10分後、一枚の手紙が完成していた。


「元気でね」と言ってしまった

入棺体験は、まず友人の番だった。

棺桶に静かに横たわる彼を見た瞬間、空気が変わった。
本当に“亡くなった人”のように見えた。

 

チーママ
チーママ

それではやまじさん、友人とお別れするために、お花を入れてください。声をかけながらお願いしますね

静かな声でそう促され、僕は花を一輪、また一輪と入れていく。

ヤマジ
ヤマジ

とっても悲しいよ。まだ一緒に遊びたかった

ヤマジ
ヤマジ

本当にありがとうね

普段そんな言葉、面と向かって言えたことなんてなかった。

でも、今は“死んでいるから”言える。

 

そして、花を入れる回数が思いのほか多かった。

なにせ、今日は僕と主催者のお二人、計三人しかいない。

「もう何て言えばいいんだ……」と困った末に、ふと口から出たのが、

ヤマジ
ヤマジ

元気でね!

棺桶の中から

友人Aさん
友人Aさん

「ふふっ」

友人Aさん
友人Aさん

死んでるのに、元気でねって……(笑)

と笑い声が漏れた。

友人が、一瞬だけ“生き返った”ように感じた。

それを見たチーママが優しく言った。

チーママ
チーママ

あっちの世界でも元気でね、ってことですよね!

場が一気に和んだ。

だけど、ここからが本番だった。

ママの朗読によって、友人が書いた弔辞が読み上げられた。

ママ
ママ

それではゆうやさんの彼女さんからの弔事を読ませていただきます。

……これが、本当に泣きそうだった。

というか、ちょっと泣いた。

読み方が絶妙で、心にすっと入ってくる。
そして、手紙の内容がまた温かくて優しくて。

そこには、普段口にできない「ありがとう」が、丁寧に紡がれていた。

【実際の友人の弔事】

ゆうや君へ
いきなり死んじゃって
ショックというより
まだ実感がわいていません。

いまでも
カンオケに入ったゆうじ君が
笑顔で飛び起きて
「ドッキリだったよ!」って言って
うしろから
ギューってしてくれるんじゃないかと
思ってしまいます。

でも
もう目を開けることもないと思うと
とても悲しいです。

手紙でも伝えたけど
ゆうや君と出会うまでは
いつ死んでもいいと
思っていました。

だけど
ゆうや君と出会って
本当に生きていて幸せだなと
思えるようになりました。

色んな遊びを教えてくれたり
色んなところに連れていってくれて
ありがとう。

たくさん愛してくれて
ありがとう。

二人でやる遊びは
ひとりじゃできません。

とてもさみしいです。

いっぱい買ったボードゲームは
捨てずに取っておきます。

いつか私も
天国に行ったら
またいっしょに遊ぼうね。

今日までありがとう。
私ももうちょっとだけ
がんばります。

なみより

弔辞が読み終わった後チーママから

チーママ
チーママ

やまじさん、故人は生きている時はどんな人でしたか?

と質問された。

ヤマジ
ヤマジ

Aさんは、本当にアクティブな方で、内に籠りがちな僕を滝行やらバンジージャンプやらいろんなところに誘ってくれました。こんなに楽しい世界があるんだよと引っ張ってくれる人生のリーダーてき存在でしたね。

チーママ
チーママ

本当に惜しい人を亡くされたのですね、、、

ヤマジ
ヤマジ

はい、、、。とっても今悲しいです。

チーママ
チーママ

でも、安心してください!これから生き返りますから!

ヤマジ
ヤマジ

ん?え?どういうこと?生き返るって本当ですか!?

そんな茶番に乗っかり、棺桶が開いた瞬間Aさんは復活した。

友人Aさん
友人Aさん

うおおおおお!生き返ったぞ!!!!

Aさんの生還にみんなが笑っていた。

 

実際のAさんの入棺体験シーン

入棺体験を通じて、普段は言えない感謝の気持ちを、死んでいる体だからこそAさんいまっすぐ伝えることができた!と感じた。

死んで、気づいた

次は、僕の番だった。

そーっと棺桶に足を踏み入れる。

ヤマジ
ヤマジ

思ったよりもぴったりだ。

体の横幅も、縦幅も、まるで最初から“この人間が入るように”作られたかのように、すっぽりとおさまった。

仰向けに寝転がった瞬間、頭の中にふとよぎった。

ヤマジ
ヤマジ

ああ、俺、今から死ぬんだな

そんなバカな、と思う。演技だし、ただの体験だし、僕は生きている。

ヤマジ
ヤマジ

もせっかくの貴重な体験だからこそ、真剣に演じよう。

そう心に刻み、目を閉じた。

入棺体験特典 撮影会

 

棺のふたが閉められ、視界が完全に真っ暗になった。

棺桶の中はとてもシーンとしている。

木の香り。顔に当たる花の感触。

 

いつも忙しなく働いている頭の中がクリーンになり、
五感だけが研ぎ澄まされた状態になった。

 

音だけが頼りになるこの空間に、

外から妻からの弔辞が聞こえてきた。

ママ
ママ

ヒデカズが亡くなったことは 今だ受け入れ難い事実ですが……

手紙の内容はこちら。

ヒデカズへ

ヒデカズが亡くなったことは
今だ受け入れ難い事実ですが
今まで一緒に生きてくれてありがとう。

ヒデカズと最初に出会ってから5年
結婚してから約1年の時間が過ぎました。
ヒデカズにはたくさん笑わせてもらったし
たくさんの楽しい思い出をいただきました。

今、私の心にある思いは1つです。
もっと一緒にいたかった。

家族もつくりたかった。
一緒に子供もつくりたかった。
一緒に子育てもしたかった。
老後まで一緒にいたかった。

なんでもう死んじゃったの?
私も今は死にたい気持ちでいっぱいです。

でもヒデカズはそう望んではいないと思います。

私はこれからヒデカズから
頂いた言葉や思い出を盾にして
あの世のヒデカズに自慢できるくらいの
幸せな人生を送ってやろうと思います。

だからうらやましそうに
あの世から見守ってくださいね。

あの世でも
元気で楽しく過ごしてください。

今まで本当に本当にありがとう。
ずっと大好きだからね。
ナツミ

 

目を閉じていたはずなのに、気づけば棺の中で涙をぬぐっていた。

ヤマジ
ヤマジ

死ぬって、こんなに人を悲しませることなんだな

ヤマジ
ヤマジ

大事な人が悲しむのって、こんなに胸が苦しいんだな

それは、僕の“妄想”なんかじゃなかった。

死を演じただけで、これほどまでに“生”の尊さを実感する

なんて思ってもいなかった。

 

実は僕、中学生の頃にいじめにあって、一度「死のう」と考えたことがある。

そのときの自分に言ってやりたい。

ヤマジ
ヤマジ

死んじゃダメだよ。こんなにも悲しむ人がいるんだよ。
大切な人を悲しませるって本当に辛いことなんだよ

ふたが開いたとき、不思議と心がリセットされていた。

ヤマジ
ヤマジ

生きてるって、すごいことなんだな

そんな当たり前のことが、あらためて骨の髄まで沁みた。

 

【実際の入棺体験の動画】

 

【実際に書いた弔辞】

2回目に書き直したやつです。



めめんともりの入棺体験で頂いた、二つの学び

今回の入棺体験を通じて、僕が得た学びは大きく二つある。

一つ目は、「自分を語れる言葉」を持つこと。

「あなたは誰ですか?」という問いに対して、

“俺はこれだ”と言える何かを持つことは、生きるということそのものなんじゃないか

と感じた。

それは、仕事でいう実績かもしれないし、誰かに与えた影響かもしれない。

  • “生きてきた証”を持つこと。
  • それを言葉にできるようにすること。

それが、生きる意味を自分の中で積み重ねることになる。

ヤマジ
ヤマジ

自分とは一体何なのか?自分を振り返る習慣を持つだけで、生き方への意識が変わることを実感した。

二つ目は、「感謝は、生きているうちにしか伝えられない」ということ。

死んでからじゃ遅いんだ。

ありがとう

ごめんね

愛してるよ

そういう言葉を、普段は恥ずかしくて飲み込んでしまうけれど、

棺桶の中にいる“相手”には、不思議と素直になれる。
だって死んでるからね(仮)

 

僕は今回、友人と参加したけれど、

これがもし妻とだったら、あるいは親とだったら――

もっと深い“想い”を伝えられたんじゃないかと思う。

ヤマジ
ヤマジ

深い想いを伝えることができれば、自然と心の距離がグッと縮まるからね

ヤマジ
ヤマジ

入棺体験のそういう使い方は大いにアリだなと感じた。

入棺体験がくれた贈り物

この体験がなければ、僕は結婚式で親に感謝の手紙なんて読めなかったと思う。

ヤマジ
ヤマジ

花嫁の手紙だけでええやん。男が読むとか、恥ずかしいやん

そう言って逃げていた僕が、結婚式の場を借りて、親に心からの感謝を伝えることができた。

それは、めめんともりで“死んだから”できたことだった。

これには本当に感謝しかない。


だからあなたにも言いたい。

もし、あなたに大切な人がいるなら。

最近、ちゃんと想いを伝えられてないなと思うなら。

終活スナック「めめんともり」の入棺体験に、ぜひ一緒に行ってみてほしい。

棺桶の中の相手に花を添えながら、想いを伝える。

そしてその人が「生き返ったとき」には、
きっと、ふたりの心の距離が少し近づいていると思う。

死を体験して、生きる意味に触れる。
そんな不思議で温かい時間を、あなたにもぜひ、味わってほしい。


終活スナック「めめんともり」の紹介

コンセプト:「カラオケないけど、カンオケあります。」
公式サイトhttps://mementomori-jp.com/

東京本店

本店の内観

  • 住所:〒135-0004 東京都江東区森下1-11-8-2F
  • アクセス:都営新宿線・大江戸線「森下駅」A3出口から徒歩1分
  • TEL:03-3631-2890
  • 営業時間:18:00〜23:00(日曜祝日定休)

 

オーナーの村田ますみさんと、ちーままの布施美佳子さん(棺桶アーティスト)がやさしく迎えてくれます。

最近は、沖縄店もオープンしたみたいです。

 

沖縄店

沖縄店の内観

  • 住所:〒900-0034 沖縄県那覇市東町18-4 東町ビル4階
  • TEL:050-1809-8279
  • 営業時間:19:00〜24:00(日曜祝日定休)
ヤマジ
ヤマジ

このブログを通じて、一人でも多くの人が「めめんともり」に足を運び、生き方と向き合う時間を持てたら嬉しいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ヤマジ

 

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